「西湖」と呼ばれる湖は中國には三十カ所以上あるが、最も人を佳境に引き入れるところは、山紫水明の杭州の西湖である。西湖は平原、丘陵、湖沼、川のつらなる地域にあり、自然の條件に恵まれている。三方を山々にいだかれた、鏡のような青い湖面。面積は約5.6平方?。寶石山にたたずめば、孤山は水面に浮かぶ、まるで緑の花冠のようだ。風にそよぐ二筋のリボン蘇堤と白堤だ。三潭印月、湖心亭、阮公墩の三つの小島は、神話の仙山を思わせる。湖をめぐる花々は織り成す錦にも似て花の環をなす。全貌を見せるのを惜しむかのように木の間がくれの樓閣と亭の數々。目を上げれば、山々は長くうねり、もやがたなびく。
西湖の美しさは山々の負うところも大きい。西南方の山々をすべて南山と稱う。北方の山々をすべて北山と稱う。これらの山峰はみな天竺から天目にいたる。あまたの星が月をとりまくように、山々はきらめく珠、西湖を抱く。高さこそ400?を超えないものの、峰の姿、林と泉の組み合わせはいずれも低さを感じさせない。とくに虎跑、竜井、玉泉などの名泉、煙霞洞、水楽洞、石屋洞などの洞穴はいやが上にも興味をそそり、足を運ばずにはいられない。
「西湖十景」は周辺の山や水、みどりの茂みや竹林の間に散在する。「十景」の名のおこりは、南宋の宮廷畫家馬遠らの西湖絵巻の題名からきているが、その後、清の康熙帝と乾隆帝が石碑にきざませ今日に伝えられた。
西湖の景色は季節によって異なる。垂柳がみどりを含み、桃の花が艶を競う春。夏の日、裡西湖一帯には、はすの葉がつらなり、花が照り映える。秋には、湖辺一帯にも「金雪世界」と呼ばれる満覚隴にも、三秋桂子の香りがただよう。冬ともなれば、放鶴亭のほとり、雪にもめげず咲きにおう寒梅、白雪におおわれた西湖。明るく清らかに靜まりかえる。身も心も洗われるすがすがしさである。
2001年4月30日
