3つの転換
耕地の削減は180萬ヘクタール以內に留める、特別保護農地には手をつけない、建設用地は規模を縮小する、これらは必須條件であった。しかし、東部地區は近代化、中部地區は勃興、西部地區は大開発、東北地區は振興、さらにインフラの整備、新しい農村の建設と、ほぼすべての地區に用地の発展を加速させるための「正當な理由」がある。農業部門は今後1億3300萬ヘクタールの耕地が必要だと主張、林業部門は2億8000萬ヘクタールの林地が必要だと主張、そして毎年新たに増やす必要のある道路用地は23萬3300ヘクタールだ。こうした狀況のなかで耕地を厳密に保護しようとすれば、9個しかない蓋を10本の瓶にかぶせるようなもので、1つ1つの蓋をきつく締めるのは難しい。
「現在、中國は工業化および都市化を加速しつつあり、各地ですさまじい勢いで耕地が建設用地となっている。現在の土地制度では地方政府のこうした動きに歯止めをかけるのは難しい」と瀋教授は言う。
しかし、退耕還林の専門家で四川社會科學院農村経済研究所の所長である郭曉鳴氏は、退耕還林の停止について、やむをえない措置だとして「數のうえから言えば、退耕還林は耕地減少の最大要因だが、耕作をやめた土地はみな最も辺鄙な地區だ。耕地を死守するための方策を退耕還林にだけ頼るべきではない」と語る。また同所長は、死守すべき耕地は東部の特別保護農地だとして「それらの農地の1ヘクタールあたり収穫高は、その他の農地の2、3倍だ」と指摘した。
耕作をやめるべきでない耕地がやめていることが問題で、一刀両斷の切り捨て政策を採るべきでない、とする郭所長は四川省の例を挙げた。四川省西北部では40~50%の土地が生産量のきわめて低い地域で、「退耕還林」政策に対する人々の依存度が高い地域だという。「しかし、役人らは往々にして抵抗の少ないところから耕作をやめさせている。一部の農民は土地から上がる収益が低いため、土地を放棄して出稼ぎに行く。これらの土地を地方政府が退耕還林の対象とするわけだが、こうして良質な耕地までが耕作をやめているケースが多い」と同所長は指摘する。
さらに「退耕還林のさまざまな矛盾が積み重なる中で、大量の農民が一挙に耕作を再開することが懸念されている。1、2年の観察期間を設け、退耕還林の持続性や定著性、収益性などを見きわめる必要があり、今は大規模な拡大を急ぐべきでない。特に中?西部の生態環境が脆弱な地區では、これまでの成果の基礎のうえにゆっくり拡大していくのが望ましい」と同所長は語った。
一方、「通達」も退耕還林プロジェクトの今後を見據えた措置である。國家林業局の李育材副所長は「今後の退耕還林には主に3つの転換があるだろう。大規模な推進からこれまでの成果の定著?深化へ、退耕還林を主體としたものから荒れた山の造林および伐採?放牧の禁止を主體としものへ、大規模な拡張から森林の質の向上および成果の獲得を主體としてものへと軸足を移すことになる」と話す。
同時に、同プロジェクトの実施地區の生態環境が総じて依然として脆弱であり、造成林が短期間では経済効果を期待できず、多くの農家にとって安定した収入増加の道が閉ざされ、農民の長期的な生計の問題が未解決であることに鑑み、國務院は「退耕還林」政策を完ぺきに実施し、現行の各種補助手當の期限が満期を迎えたあとも1サイクル分の補助手當を支給することを決め、中央財政から新たに約2000億元の投資を行い、「退耕還林」プロジェクトに対する総投資額を約4兆3000億元とすることを決定した。
李副局長によると、07年に「退耕還林」の計畫がないことは、今後も同プロジェクトが完全に停止することを意味するものではないという。「通達」は、國務院の関連部門が25度以上の傾斜耕地の実情を把握し、さらに突っ込んだ調査?研究を行ったうえで、「退耕還林」プロジェクトの実施計畫を策定することも同時に求めている。
「北京週報日本語版」より2007年11月1日