林國本
最近、香港のフェニックス?テレビの番組でイスラエルの農業科學技術についての解説、取材を見たが、この番組の主眼とするところは、同じように水資源の不足に悩まされる中國の農業への応用の可能性であった。
私が深い感銘を覚えたのは、イスラエルはその建國の歴史から見ても、かなり劣悪な自然環境に置かれていた。建國の初期から國土の七割が乾燥地帯で、水不足に悩まれてきたらしい。そうした苛酷な自然條件の中で、乾燥地帯の開墾に取り組み、初めからスプリンクラー灌漑、さらにはそれ以上に節水を目指す點滴灌漑の応用に力を入れ、世界でも屈指のスプリンクラー灌漑システムをつくり上げ、今では良質の農産物をヨーロッパ諸國に輸出するようになっているということである。
中國は熱帯、亜熱帯、溫帯、寒冷地帯といったさまざまな気候帯に恵まれ、農業生産の発展という面ではイスラエルよりはるかに恵まれているが、なが年粗放的な耕作をつづけてきたこともあり、生産性の面でイスラエルに劣る地域もある。また、かりに農産物を輸出するという點から考えると、競爭力はかなり劣ると言わざるを得ない。さいわい、農産物の輸出は重點ではないので、いまのところまだ深刻に考えることもないが、しかし、都市化が徐々に進み、農業専従者の高齢化がだんだんと顕在化している昨今のこと、この辺で冷靜に農業の強化、農業専従者の生活水準の向上を考える時期に來ているのではないかと思う。