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林國(guó)本

中國(guó)は今年建國(guó)60周年を迎えることになった。メディアでは、いろいろな分野の回想みたいな企畫が次々と組まれている。私はこの60年を最初の年から完走した人間ではないが、その大切な一期間をみんなと一緒に過ごしてきたので、やはり感無(wú)量のものがある。一庶民として私は來(lái)し方を振り返ってみることにした。

ユダヤ系で、ナチスの迫害を逃れてアメリカに移住したエリクソンという學(xué)者が提起したアイデンティティーという用語(yǔ)を借りるならば、私のアイデンティティーは1963年の中國(guó)の対日?qǐng)?bào)道の週刊誌の創(chuàng)刊によって構(gòu)築が始まることになった。その時(shí)私はまだ青二才だった。この週刊誌で定年まで頑張り続け、その後はそれまでの蓄積をベースにそれを存分に生かして、コミュニケーションのさまざまな分野で楽しんできた。そして、その中でマルチ人間としてのさまざまなコンテンツ、モジュール、システムの構(gòu)築を続けてきた。そういうことで、認(rèn)知癥にでもならないかぎり、生涯メディアの世界から離れることはないようである。これはラッキーなことである。

さいきん、われわれの系列の60周年記念に使える寫真はないか、と言われたのがきっかけで、古いアルバムをめくっていると、60年代の寫真がたくさんあることに気づいた。みんな灰色（グレー）の人民服姿で、実に質(zhì)素そのもので、今日のようなブランド品を著た自分の姿と比較してみると、まさに隔世の感がある。あの頃はすべてが衣料切符による配給制で、灰色の人民服も一年に一著か二著買うのがやっとだった。食料品も配給制だった。地方へ出張、取材に行くときには、食糧配給のクーポンを持參しなければならなかった。これらの切符、クーポンは今では博物館の展示品となっている。しかし、あの頃はみんなそれほど苦しいとは感じていなかった。みんな同じような暮らしをしていたし、住居も分配制で、とにかく定年まで勤めれば、なにがしかの年金ももらえるし、とくに私のような仕事、仕事で暮らしていた人間は、物質(zhì)面では無(wú)頓著であった。仕事の面では実に好條件に恵まれていた。日本の新聞、雑誌は読めるし、外國(guó)の映畫も「弁士」になって自分も楽しむことができ、月日の流れるのを完全にといっていいほど忘れていた。

それが突然、市場(chǎng)原理の導(dǎo)入というご時(shí)世へと場(chǎng)面ががらりと転換した。中國(guó)がWTOに加入した頃は、日本のメディアの一部では、中國(guó)の自動(dòng)車産業(yè)、小売業(yè)は壊滅的な打撃を被るのではないか、と報(bào)じられていた。私も正直にいって、鄧小平さんのような戦略眼がなかったので、內(nèi)心、大丈夫かなとすこしは心配していた。ところがどうか。今では自動(dòng)車販売臺(tái)數(shù)がぐんぐんと伸び、小売業(yè)の発展も目覚しいものがある。私の勤務(wù)していた週刊誌の社屋の近くのショッピングモールでは、フランス、イタリアのブランド品も買えるし、「スタバ」のコーヒー店もテナントとして入っている。私も近代化というものを?qū)g感してみようかなと、「スタバ」に何回か入ってみたが、あの雰囲気はどうみてもヤングたちのものだった。なにか場(chǎng)違いのようなものを感じた。私はもう「ロートル（老頭）」なのかな。

中國(guó)はこのように急速に発展を遂げつつあるのだ。この変化に順応していくためには、不斷の學(xué)習(xí)が必要なのかもしれない。しかし、中國(guó)の國(guó)際的地位が向上することはいいことだと思う。生活のリズムが速くなり、いまの若者たちにとってはたいへんだろうが、近代化というものは、そういうことなのだと達(dá)観して、それを先取りする方が賢明であろう。アメリカや日本では百年も前からそうだったのだから。私も一庶民としてこの大変化の波をこれまでのところ、巧みにプラスに転じて、みずからを一回りもふた回りも大きくしてきた。これからも、ウィンドサーフィンの心得で前進(jìn)していくつもりである。一庶民として、本當(dāng)の意味でパラダイム?シフトに直面して、二つのシステムを生きることができたのはラッキーなことかもしれない。日本の人たちは1945年の敗戦時(shí)にこういう大転換を経験しているが、私にとっても中國(guó)で起こった転換はすごいものだったと思っている。

配給制でがんじがらめになっていた日常からイタリア料理、フランス料理、日本料理なんでもござれのご時(shí)世になり、ルイビトン、エルメス、バレンチーノといったブランド品がショーウィンドーに並ぶ時(shí)代となったのである。そのうちに、「先に豊かになった人たち」の中から自家用機(jī)をもつ人さえ現(xiàn)れるのもそう遠(yuǎn)くはないと思う。

もちろん、地域格差の問題にも気を配らなければならない。內(nèi)陸部の一部では、ルイビトン、エルメスなんて、まだ夢(mèng)の中の話かもしれない。昨今は社會(huì)保障についての話題もよくメディアで目にすることになった。「和諧社會(huì)」、「科學(xué)的発展観」ということが強(qiáng)調(diào)される昨今である。來(lái)し方を振り返り、未來(lái)を展望するなかで60周年を一庶民として迎えたいと思っている。

「チャイナネット」　2009年9月14日