麗澤大學特任教授 三潴 正道
「西施は絶世の美人だったけど、東施は絶世のその反対だった」
「ひ、ひどい言い方!」
「ま、昔の話だからその辺遠慮がないんだね」
「それにしたって---。で、その東施がどうしたの?」
「西施は癪もちでね、いつもちょっと眉をひそめて俯き加減に歩いていた」
「あら、可哀想!」
「男から見るとその風情がまたたまらない」
「ふーん、そんなもんかしらね」
「それを見た東施、“そうか!ああすればもてるんだ!”」
「本當にもてたのかしら」
「東施がそうやって路を歩くとみんなバタバタと戸を閉めた」
「あんまりだわ!可哀想すぎる。それって完全なセクハラよ!」
「でもさ、この間、テレビで懐かしの歌謡曲、っていうのをやっていた」
「中國人のあなたでも興味あるの?」
「あるさ!そうしたら、その中で松田聖子の紹介をしていた。可愛かったんだね!」
「すぐそれなんだから。歌がいいのよ。『赤いスイートピー』なんて好きだわ」
「でも、みんな真似して、聖子ちゃんカットていう髪型が流行ったんだよ」
「わかった、それ以上言わなくていいわ。日本の女性を敵に回すわよ!」
「こわっ、話を変えようか。西施っていつの時代の人か知ってる?」
「ずいぶん昔よね」
「そう、春秋時代の女性だ。紀元前だよね」
「なんで有名になったの?」
「君、呉越同舟って知ってるだろ?」
「ええ、ライバル同士が一緒に入る事でしょ」
「その通り。呉と越は仇敵同士だった」
「臥薪嘗膽の語源よね」
「すごい!よく知っているね」
「成語故事の授業で習ったのよ。それだけじゃないわよ」
「まだ何か知ってるの?」
「死んだおじいちゃんの口癖、“時に范蠡無きにしも非ず”」
「なんだい、それ?」
「あら、あなた、范蠡知らないの?」
「日本語で言われてもね」
「そうか。実はこの人、日本史にも出てくるのよ」
「中國網日本語版(チャイナネット)」2018年10月10日