日本政府は周辺諸國と國際社會の疑問と反対を無視し、福島原発の放射性物質を含む汚染水の海洋放出を公然と決定し、多くの國の人々の大きな憤激を引き起こした。韓國は日本と海を隔てて向かい合っており、汚染水海洋放出の最初の直接的な被害國になる。(筆者?高之國=國際海洋法裁判所元裁判官、海南大學法學院客員院長 銭江濤=中國政法大學博士課程院生)
この脅威を受け、韓國の文在寅大統領は関連部門に対して、國際海洋法裁判所に臨時措置を申請するか訴訟を起こすよう指示している。國際海洋法裁判所に対して、その最終判決を下す前に日本の汚染水海洋放出を一時的に禁じるよう要請し、韓國の利益と海洋環境を守るよう指示している。
韓國のこの提案については、國際的な司法の実踐において先例がある。ウルグアイ川パルプ工場のケース(以下「1件目」)において、アルゼンチンはウルグアイが「ウルグアイ川規約」における手続きの責任及び実質的な責任に同時に背き、告知義務及び汚染予防義務を果たさなかったとして、ウルグアイを相手取り國際司法裁判所に訴訟を起こした。また國際司法裁判所に対して、最終判決を下す前にウルグアイにパルプ工場の建設を中止させる臨時措置を講じるよう要請した。
國際海洋法裁判所が法廷審理したMOX工場のケース(以下「2件目」)において、アイルランドは英國の核活動にリスクが存在し、海洋の生態環境、さらには漁業の利益に大きな損害をもたらすとした。アイルランドはリスク予防の原則に基づき、MOX工場の稼働及びその排出が環境?生態を損ねないことを証明する責任があると主張したが、英國はその義務を果たさなかった。アイルランドはまず、英國との「MOX工場燃料工場、放射性物質の越境移動及びアイルランド海洋環境保護に関する紛爭」を「國連海洋法條約」付屬書7の仲裁手続きに提出し、その後さらに國際海洋法裁判所に対してMOX工場の稼働を阻止する臨時措置を講じるよう要請した。
この2件はTrail製錬所のケース(米國がカナダを相手取り訴訟)と異なり、國境を跨ぐ実質的な汚染による損害は発生しなかった。1件目で、アルゼンチンは國際海洋法裁判所に対して、パルプ工場からの汚染がウルグアイ川の不可逆的な損害を引き起こすことを証明しなかった。そのため裁判所は臨時措置を講じる必要はないと判斷し、またウルグアイにパルプ工場の建設停止を求めなかった。しかし裁判所は同時に、今後アルゼンチンのウクライナに対する指摘を指示する証拠が挙がれば、ウクライナはすべてのリスクを受け入れることとした。2件目でも同じく、実質的な損害が生じることを直接示す証拠がないため、裁判所はアイルランドからの要請を支持せず、英國にMOX工場の稼働を阻止する必要な措置を直ちに講じるよう求めなかった。しかし裁判所はアイルランドに、英國のMOX工場のアイルランドの海洋環境への影響及び危害について調査するよう求めた。
そのため、國際海洋法裁判所もしくは國際司法裁判所に対して、日本の汚染水海洋放出を一時的に禁じる臨時措置を申請することは、國の実踐の先例があり実行可能でもある。
本件は國際法の各種原則及び義務と関連し、かつ「國連海洋法條約」「原子力事故の早期通報に関する條約」「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する條約」「原子力の安全に関する條約」「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する條約」などの條約に示されている。上述した條約の規定によると、日本は海洋環境保護?保全の一般的な國際法の義務を果たすべきだ。また汚染水放出のすべての決定について周辺諸國もしくは影響を受ける國及び國際機関と協力し必要な情報を共有し、緊急時の計畫を策定し、海洋環境汚染の防止?減少?抑制に適用される國際ルール及び基準を守るべきだ。