文=項昊宇?中國國際問題研究院アジア太平洋研究所客員研究員
韓國の尹錫悅大統領が代表団を率い、今月16、17日に日本を訪問した。韓國の大統領による訪日は11年3カ月ぶり。尹氏の一行と日本の各界は訪問中に大々的な交流を展開し、韓日関係の改善の成果をアピールした。この歴史問題をめぐる韓國側の妥協と譲歩により手にした「破氷の旅」は、韓日関係に深刻な問題を殘すばかりか、地域の平和と安定に新たなリスクをもたらす可能性がある。
成果を見ると、尹氏の今回の訪問により韓日関係には3つの改善があった。(1)政治的な緊張の緩和。韓日首脳は首脳による毎年の相互訪問「シャトル外交」の再開を発表した。(2)経済?貿易摩擦の緩和。日本側は半導體原材料の対韓輸出規制の解除を発表し、韓國側は世界貿易機関(WTO)への紛爭解決手続きを取り下げた。日韓両國はさらに「経済安保対話」メカニズムを構築し、半導體などの重要戦略物資のサプライチェーンを共に強化する予定だ。(3)安全協力の再開。雙方は「日韓安保対話」の再開、米日韓弾道ミサイル情報共有メカニズムの強化、「日韓秘密軍事情報保護協定」の再開で合意した。
しかし尹氏の今回の訪問は、日韓間の問題が全面的に解消されたことを意味しない。日韓の今回の交流は両國の右派?保守勢力間の「講和」であり、韓日関係は一時的に一部で緩和されるが、「和解」では決してないと言うべきだ。特に尹政権は歴史問題で日本に譲歩し、韓日の軍事協力を強化するとしたが、これは両國関係の未來の発展及び地域情勢に多くの問題を殘した。
(一)韓國の日本への譲歩は「禍根」を殘した。過去數年に渡る韓日の対立の原因は徴用工問題にある。尹政権は訪日前、韓國の財団が出資する「第3者肩代わり案」を発表し、韓國國內で猛反発を浴びた。野黨と多くの市民はこれを「売國の屈辱外交」と批判し、原告側の被害者も受け入れを拒否している。韓國メディアも尹氏の訪日の成果を高く買っていない。韓國の保守紙「朝鮮日報」は「経済及び安保に進展があった」としたが、「日本側は態度を保留しており、積極的な姿勢が欠け遺憾だ」ともした。進歩派の「ハンギョレ新聞」は、「日本側のまったく誠意のない反応により、今回の訪問は尹政権の外交の慘敗となった」と鋭く批判した。
(二)米日韓の安全協力は陣営の対抗を激化させる。日韓関係の緩和を裏から促したのは米國だ。米國の戦略的な意図は、米日韓の「鉄のトライアングル」を構築することで北東アジアの前線における軍備を強化し、米日韓軍事協力に「朝鮮に圧力をかけ、中露をけん制する」という力を発揮させることで、米國の北東アジアにおける覇権を再構築することにある。ミサイルへの対応をめぐる米日韓の協力の持続的な強化、抑止力拡大をめぐる協議の推進は、朝鮮の核保有の決意をさらに刺激し、半島情勢の緊張を激化させる可能性がある。さらに広い範囲で見ると、米日は韓國を米日印豪の安全枠組み「クアッド」に誘い、米日主導の地政學的な対抗の性質を持つ「インド太平洋戦略」に加入させることで、地域をさらに分斷させ、アジア太平洋の戦略的な安定と地域一體化の流れに衝撃を及ぼす可能性がある。
(三)韓國の外交がバランスを崩し、自國の戦略的な余地を狹める。尹政権は発足後、韓米同盟の強化に取り組み続け、韓日関係の改善に積極的に力を入れているが、中露に対してはただ対抗?けん制の姿勢をアピールしている。韓國の伝統的な中米露日の「4強外交」が形骸化している。尹政権は韓國を「グローバルハブ化」させると述べているが、大國に挾まれる韓國は、周辺諸國との関係の処理でバランスを保つことで初めて自國の利益を最大化できる。尹政権の対外関係をめぐる米日への「一辺倒」は、韓國の外交の余地を大きく狹めるばかりで、韓國の長期的な國益に合致しない。
「中國網日本語版(チャイナネット)」2023年3月19日