中國では現在、伝統的な業界において、新しいスタイルで起業する留學帰國者が増加している。人民日報海外版が報じた。
英國に留學していた◆(刑のひだりにおおざと)淑賢さんは、英國で最新のサツマイモ加工技術を學び、帰國後に自らサツマイモ農場を作り、サツマイモを販売する店も開いた。遼寧省大連市の劉明◆(ひへんに韋)さんは米フロリダ州に留學し、修士號を取得した。帰國後、ホワイトカラーとして企業に勤める傍ら、街中でホットドッグを販売している。陝西省西安市の張歓さんは、スイス留學から帰國後、會社を興して弁當を売っている。わずか數年の間に、売上額は2000萬元(約3億2千萬円)に達したという。
北京の國際貿易センター內のそれほど目立たない場所に、煎餅(中國では小麥粉や緑豆などの粉を水で溶いて、鉄板上に広げて焼いたものを指す)を販売する店がある。店の大きさはわずか數十平方メートルだ。しかし、店主の赫暢さんは、年間売上高約500萬元(約8千萬円)の記録を打ち立てた。赫さんはデンマークに留學し、帰國して同店を開いた。メディアに報道される前から、同店は現地では名の知れた店となっていた。同店の煎餅は試行錯誤をこらし、さまざまな食材を使って異なる味を作り出している。赫さんは「煎餅と聞くとありふれた感じがするが、実際には研究のしがいがある。小麥粉の量や比率、具の油條(中國風長揚げパン)の硬さ、塗るミソの加減など、どの段階にもノウハウがある。販売している新しい味は、少しずつ研究して作り出したもの」と胸を張る。
2004年に帰國した赫さんは、これまでに大手検索サイト「百 度」や旅行情報サービスサイト「Qunar」、米大手検索サイト「グーグル」などに務めた経験があるほか、広告會社2社を立ち上げたこともある。初めての飲食業となった煎餅の店は、3度目の起業だ。赫さんの起業の助けになったのは、インターネットマーケティングだといい、開店以降、「微博(ウェイボー?ミニブログ)」や口コミサイト「大衆點評網」、無料メッセンジャー「微信(ウィーチャット)」、出會い系アプリ「陌陌」など、ありとあらゆる人気メディアプラットフォームを利用してキャンペーン情報を配信したり、予約サービスを提供したりしてきた。赫さんは「インターネットを駆使して立地條件の悪さを乗り越えた。一流の區域で、目立たない三流の店舗を借りたが、ネット上でマーケティングをすることで、お客さんの『目にとまり』、知られるようになった。お客さんは、自ら店を探して來てくれる」と語る。
▽小規模の事業でも真面目さが大きな成果を生む
どんな分野にしても、起業というのはそれほど簡単なことではない。煎餅の店も、1日の営業時間は20時間に達する。何千という客に、何千枚もの商品を作って、販売して初めて、奇跡とも言える売上高が達成できるのだ。小さな店を開き、煎餅を売ることに理解を示さない人もいるが、赫さんは「世界を探る過程を楽しんでいる。世界を変えることはできないが、煎餅は変えた。そして、美食の伝統を変え、自分自身も変えた」と充実感を語る。
煎餅を売る◆さんにしても、サツマイモを売る赫さんにしても、「事業を営む」という心構えで仕事に勵んでいる。せっかく海外で留學して帰國したのに、このような仕事はもったいないという人もいるが、実際には「起業」に大小はない。彼らのことをよく知れば、経営方法や管理理念などの面で、彼らが伝統的な業界に新たな風を吹き入れてくれたことに気付くはずだ。
「人民網日本語版」2013年8月19日