日中経済協會北京事務所
副所長 高見澤學
昨年12月に江蘇省を視察した習近平國家主席が初めて提唱した「四つの全面」は、江沢民元國家主席の「三つの代表」や胡錦濤前國家主席の「科學的発展観」に続く中國共産黨の重要な行動指針として、黨規約に盛り込まれる可能性もある。「四つの全面」の具體的內容は①全面的な小康社會の建設、②全面的な改革の深化、③全面的な法による國家統治、④全面的な厳格なる共産黨統治である。①と②は経済的性格が色濃く、③と④は政治的性格が強いものと思われる。
この「四つの全面」の実現は、今後中國が持続可能な発展を達成し、國際化の道みを歩むうえで必要不可欠なことであろう。すでに溫飽社會を基本的に実現し、次の段階として小康社會を目指す中國だが、それはまだ道半ばだ。小康社會の実現には、経済の発展方式の転換や産業構造の優良化など改革の深化が必要であり、中國國內の格差是正や環境汚染対策等解決すべき課題が山積している。「四つの全面」の最初に経済性の強いテーマを據えていることで、習主席が経済問題を最優先課題としていることは明らかで、①と②は中國人民にとって最も歓迎すべきテーマであるといえよう。
一方中國では、一部の共産黨幹部や政府高官の腐敗が以前から問題視されており、法規の見直しや「8項規定」の実施などを通じて、以前にも増して取り締まりが強化されている。曖昧であった法規の解釈も條文で具體的に明記されるなど統一化が図られ、當局擔當者による裁量の余地も徐々に縮小されている。これまで既得権益を享受してきた一部の層に反発されることもあろうが、法の下の平等という意味で、「四つの全面」の③と④も中國人民に歓迎されるはずである。習主席の掲げる「四つの全面」は、中國人民の最大の関心を反映したスローガンであるといえるだろう。