ロシアとウクライナの軍事衝突が勃発してから1カ月余りが経過した。今回の突然の軍事衝突は、歐州の安全保障を未曾有の危機に陥れただけでなく、冷戦の「遺産」である北大西洋條約機構(NATO)に善人面をして再登場する機會を與えた。NATOはブリュッセルで3月24日、ロシア?ウクライナ紛爭に対処するため首脳會議を開催した。加盟國は會議後に共同聲明を発表、ウクライナへの軍事支援を継続し、東部におけるNATOの軍事配備を強化すると明らかにした。一方、米國はロシア?ウクライナ危機の激化を理由に、數カ月前から歐州への米軍増派を進めている。歐州に駐留する米軍は10萬人に達し、冷戦終結後最大規模になるという。
NATOはもともと、冷戦時代にワルシャワ條約機構に対抗する政治軍事同盟だった。ソ連が崩壊しワルシャワ條約機構が解體した後、NATOはすでにその存在意義を失っており、歴史の舞臺から退場すべきだった。しかしNATOはロシアを仮想敵國と見なし、いわゆる「大西洋橫斷関係」の結びつき強化を口実に、米國の歐州における軍事的存在を維持してきた。米國はNATOという歐州への影響力を持続的に注入できる重要な擔い手を手放したくないものの、冷戦の終結に伴いNATOが「鶏肋」(たいして役に立たないが捨てるには惜しいもの)になりつつあることは紛れもない事実だ。このため、米國とEU諸國との戦略的信頼関係も度々危機に見舞われている。米歐がいくら大西洋橫斷関係を強固にする意欲を示し、「価値観外交」を懸命に演じようとしても、現実には米國が頼りにならないことをEUはよく知っているし、米國もEUに過分な望みは抱いていない。
しかし、米國は歐州情勢に深く関與し続けたいがために、EUが目指す「戦略的自律」の徹底推進を必ずしも望んではいない。2018年、マクロン氏は第一次世界大戦終結100年記念行事で「歐州軍」創設を訴えたが、當時のトランプ米大統領は「米國に対する侮辱」だと即座にツイートした。今、ロシア?ウクライナ紛爭の勃発で、米國は歐州への影響力を再強化する「千載一遇」のチャンスを得た。今回のNATO首脳會議で、米國は最大の勝者となった。歐州諸國は軍事費の増額に同意し、米國の軍事費分擔の要求にようやく応えた。その一方で、米國はNATO軍の兵力を増強し、歐州に対する支配力を強化した。EUは米國の対露制裁に參加したことで、エネルギー?安全保障の面で米國への依存度を高めざるを得ず、「戦略的自律」へのプロセスも大きく頓挫した。もともと戦爭で財を成すことが得意な米國は、今回の対露制裁の一方でEUを牽制し、まさに「一石二鳥」で大きな収益を上げている。
EUは、冷戦時代の米歐の同盟関係がすでに時代遅れの遺物となったことをはっきりと認識する必要がある。一國主義と覇権主義が米國政府の長期的理念となりつつあるが、これは中國とEUが掲げる多國間主義の価値観と相反するものだ。EUは政治的?経済的に世界で大きな影響力を持っており、米國の従屬國に甘んじてはならない。ロシア?ウクライナの衝突においても火中の栗を拾うべきではなく、自國の各分野における獨立性を守り、「戦略的自律」という目標の実現を斷固として推進すべきだ。
「中國網日本語版(チャイナネット)」2022年4月10日