米國で販売されたハイブリット車「プリウス」が突然、急加速したとする運転者の主張に対し、トヨタ自動車は15日、「調査の結果、アクセルペダルと安全裝置にはいずれも異常が見られなかった」と発表した。
プリウス急加速問題を受けて、米ワシントン州とアリゾナ州のトヨタ車購入者が15日、代金の全額返還を求める集団訴訟を起こす可能性がある。
▽トヨタの反論
ジェームズ?サイクスさん(61)が3月8日、08年型のプリウスを運転し、カルフォルニア州の高速道路を走行していたところ、ブレーキペダルが突然フロアマットに引っ掛かり、もとに戻らなくなった。サイクスさんによると、「ブレーキペダルを思い切り踏み続けてもブレーキが利かず、車が急加速、時速145キロに達した。幸い、巡回していた警察官の助けを得て、停車させることができた」という。
トヨタ自動車と米運輸省國家道路交通安全局(NHTSA)は、いずれも急加速問題について、調査を行った。
共同通信によると、トヨタは今月10日と11日の両日、問題のプリウスに対して調査を実施、「車載コンピューターの記録は運転者の主張と一致しない」とサイクスさんの主張に反論した。コンピューターの記録は、プリウスが暴走したとされる間、アクセルペダルとブレーキペダルが繰り返し250回も作動していたことを示しており、「ブレーキペダルをずっと踏みつづけていた」とするサイクスさんの主張とは異なる。
調査結果によると、前輪の制動裝置は過熱のため磨耗していたが、後輪の制動裝置と駐車制動裝置はいずれも異常がなかった。アクセルペダルの戻りも正常で、フロアマットもアクセルペダルに引っ掛かる狀態ではなかったという。
また、このプリウスには安全裝備として、アクセルとブレーキを同時に踏むとエンジンへの燃料供給が止まる仕組みが導入されている。共同通信はトヨタの説明を引用し、「男性が主張した現象は構造上も起こらない」と伝えた。
トヨタのマイク?マイケルズ報道官は15日の記者會見で「サイクスさんの意見に異議はないが、彼の主張と技術調査の結果は異なる」と述べた。
▽失敗した急加速の再現
トヨタが調査結果を公表してすぐに、同じく調査を行っていた米NHTSAが聲明を発表、車載コンピューターの記録を現在調査中で、急加速を引き起こした原因は今のところ見つかっていないことを明らかにした。
ロイター通信は「調査員はサイクスさんの主張を否定または裏付ける証拠を見つけることができなかった。実験によって、急加速の再現を試みたが、失敗に終わった」と報じた。
聲明は「調査は引き続き行われる。あの日何が起こったのか、真相は永遠に究明されないかもしれない」としている。
トヨタのマイケルズ報道官は、問題のプリウスをまもなくサイクスさんのもとに返すことを発表した。AP通信は「この決定はトヨタが今後、この車の電子系統を検査することはないことを意味している」と分析、「トヨタは電気系統の欠陥ではなく、機械の故障により引き起こされたものだとの主張を繰り返してきた」と伝えた。
マイクスさんの弁護士は、NHTSAの最終調査結果が公表されるのを前に、トヨタの調査結果に対するコメントを控えたが、「急加速の狀況を再現することは不可能だ。サイクスさんがこのプリウスを購入してから3年経つが、ずっと問題はなかった」と語った。
アクセルペダル、運転席のフロアマット、ブレーキペダル、および他の部品に不具合があるとして、トヨタはここ數カ月、全世界で計約800萬臺をリコールした。うち、サイクスさんが運転していた08年型のプリウスはアクセルペダルではなく、フロアマットの不具合でリコール対象となった。
▽全額返還を求める集団訴訟へ
米國では、リコール問題が起こってから今まで、リコールによる市場価値の下落をめぐる賠償訴訟を含む、數十件に上る集団訴訟が起きている。
プリウスの急加速問題を受けて、ワシントン州とアリゾナ州のトヨタ車購入者數名が15日、代金の全額返還を求める訴訟を起こすと見られる。
AP通信は「米國消費者がトヨタに全額返還を求めるのは初めてだ」と報じた。
弁護士のSteve Berman氏は「急加速問題でトヨタ車が安全ではないことが証明された、というのが購入者たちの認識だ。二度とトヨタ車を信用することはない」と指摘、「數百ドル足らずの賠償金を得たぐらいで、子どもを今後もトヨタ車に乗せようとする親はどこにもいないだろう」と語った。
トヨタ車の購入者が一致して希望していることは、車を販売店に返し、代金を取り戻すことだという。Berman氏は「幸いなのは、法律による解決が望めることだ。法廷で裁決を求める」と述べた。
この全額返還を求める集団訴訟について、トヨタはまだコメントしていない。AP通信は「集団訴訟についてコメントしないことがトヨタの通例となっている」と指摘した。
「人民網日本語版」2010年3月17日