麗澤大學特任教授 三潴 正道
まだ終わらない干支の話
「中國語では午前のことは何て言ったっけ」
「“上午”でしょ。午後は“下午”」
「正解!日本語は、午前、午後だよね」
「何でどちらも“午”がつくのかしら」
「昔は時刻を十二支で表したでしょ。日本もそうだよね」
「そうそう、鬼平のマンガでも、丑の刻なんていうのがあったわ」
「一日24時間を十二支で表したら十二刻」
「だったら一刻は2時間よね」
「そう、午前零時が子の刻さ。それから2時間ごとに、丑の刻、寅の刻---となるんだ」
「“草木も眠る丑満時”って怪談話でよく聞くけど---」
「丑満時って言えばちょうど午前2時だよ」
「あっ、睡眠曲線が一番深くなるころだわ。だから“草木も眠る”んだ」
「なんだか面白くなってきたね。他にはないの?」
「あるある、辰の刻と言えば登城の觸れ太鼓。えーと、辰の刻は午前8時、ピッタリね」
「十二支は方角にも使うよ」
「そう、昔、江戸には辰巳蕓者、っていう人たちがいたんだって」
「方角と何で関係があるの?」
「江戸城から見て辰巳の方角は深川、其処には蕓者さんたちがいたから」
「よく知ってるね」
「今、スマホで調べたのよ。ふーん、辰巳は一字で巽って書くんだ」
「省略文字だね」
「戌亥は乾、未申は坤、丑寅は艮だって。こんな字知らなかった」
「そう言えば、中國語の先生で乾さんという人がいた」
「京都御所には乾門というのがあり、お城には巽櫓があるって書いてあるわ」
「いろいろ見つかったね」
「十干の話だけれど、中國で還暦のことを“花甲”って言わなかった?」
「言うよ。“甲”は色々な使われ方をしている」
「例えば?」
「“意甲”はセリエA、“甲級戦犯”は“A級戦犯”」
「“甲”はAなのね」
「そう、だから“乙肝”はB型肝炎なのさ」
「中國網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月29日